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2016年04月01日
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「枠から人へ」に足りないもの。エンゲージメントを構築するのは、共鳴する「コンテンツ」だ。

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インターネットの普及とあわせて、SEO対策がマーケティングの重点施策になった時代があり、それを被リンクなどの小手先の技で解決するトレンドが流行り、その後ネットの主戦場がソーシャルメディアやキュレーションメディアへと推移し、検索エンジンやアドテクノロジーの進化によって従来のディスプレイ型広告からより仔細なターゲティングをベースにした運用型広告へと、デジタルマーケティングのトレンドはシフトしてきています。また昨今では、ブランディングを目的としたオウンドメディア運用やコンテンツマーケティングの実施が加速。それらの施策によって蓄積された膨大なビッグデータを統合的に管理・運用するDMP(Data Management Platform)の導入も大きな注目を集めています。

これらの流れと共にここ2~3年、デジタルマーケティングの世界では「枠から人へ」というキーワードが盛んに叫ばれてきました。

「枠」とはいわゆるメディアの広告スペースであり、「枠」を中心とするコミュニケーションの考え方の基本は「人が集まるメディアの広告スペースを買う」というものです。

対して「人」はいわゆるターゲットのことで、「人」を中心とするコミュニケーションの考え方の基本は「広告を見せたい人を買う」というものです。

同じメディアを対象とした広告展開であっても、この「枠」と「人」の違いは大きく、「枠を買う」という概念がメディアに集まるすべてのユーザーを対象としているのに対して、「人を買う」という概念は、メディアに集まるユーザーの中から自社の商品やブランドに適したターゲティングを行なった上でユーザーを取捨選択する、というものです。

わかりやすい例でいえば、自分が訪問したサイトの広告スペースに自分が興味のある分野の広告だけが掲出されたり、以前閲覧したことがある商品やサービスのサイトへの誘導バナーが、別のメディアを訪問した際に広告スペースに何度も表れる、というパターンで、これらは「リターゲティング広告」や「行動ターゲティング広告」「追跡型広告」と呼ばれるものです。

このリターゲティング広告はいまデジタルマーケティングの世界では最も主流の広告戦術で、マーケティング的にはそれだけ合理的で効果的な戦術だということがいえるわけですが、クリエイティブ・エージェンシーの立場から見ると、どうもいまひとつ頭の隅にひっかかるものがあります。

それは簡潔にいえば「コンテンツが置き去りにされている」という点です。

メディアというのはコンテンツの集合体であり、人(顧客)はそのコンテンツの周囲に存在するわけです。インターネットがまだ登場する前の時代のメディアでは、メディアはATL(Above the line)、プロモーションは BTL(Below the line)という棲み分けがされており、メディアの価値は「コンテンツ」と「人(読者/視聴者)」の両面から語られることが当たり前で、メディアでのコミュニケーションに求める成果も「認知」「興味」「理解」「好意」「ロイヤルティ」でした。しかしインターネット普及によりATL/BTLの棲み分けがなくなりTTL(Through the line)へとシフトした現代では、コミュニケーションに求める成果も「コンバージョン」中心となり、メディアの価値は「人(ユーザー)」と「数値」のみで語られることが多く、そもそもそこにあるはずの「コンテンツ」の価値はあまり優先されなくなっている気がします。誤解や批判を恐れずにいえば、メディア価値は「人さえ集まれば」という論理になりかねません。これではメディアはますます衰退してゆくばかりです。

以前、当サイトのブログhttp://www.adw.co.jp/blog/20160229.html)でも触れましたが、海外の現状と比較して日本のデジタル広告の成長率が著しく低い理由のひとつとして、「流通コストを低減させるのと同じような理屈で広告枠を仕入れるので、媒体そのもの価値が検討されることはない」という理由があげられます。

前回のトピックス記事(http://www.adw.co.jp/topics/20160331.html)でも書きましたが、ブランディングの重要性が叫ばれている現代では、ブランドとのエンゲージメントの構築こそが最重要課題です。メディア自体も自社のブランド価値を高めてゆくためには、「枠」か「人」かという単純な議論ではなく「枠の周囲にコンテンツがあり、そのコンテンツに人は集まっている」という大前提、顧客の共鳴・共感を創出する「コンテンツ」に注力すべきであり、広告主もまた数値だけを追いかける出稿計画ではなく、そのメディアとどのようなコンテンツを共に作り上げてゆくかという「共創」の精神をもとにしたメディア・コミュニケーションデザインを行なってゆく必要があるでしょう。