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2016年03月31日
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ブランディングを担うマーケティング担当者は、 バズやPVの数値主義から離れ、嗅覚を鍛えるべし!

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デジタルマーケティングがコミュニケーション戦略の重要なカギを握る現代では、顧客情報をはじめ、購買、情報摂取、情報発信の動向などについてもより緻密なデータが蓄積され、どのようなデモグラフィックの顧客がどのような行動パターンを経て最終的なコンバージョンにいたるかが、緻密に分析され、具体的な「数値」として可視化されています。そして多くの企業のマーケティングの現場では、これらの「数値」がコミュニケーション施策を精査決定する上で大きなウエイトを占めます。

たとえば大多数の関係者を説得・納得させるときに、数値を明示するほうが明らかに全体のコンセンサスは取りまとめやすい。それは数値が「感覚的」ではなく極めて「論理的」な存在だからです。「誰にでもわかりやすい」という点と「有無を言わせない絶対的な結果」であるという点で、「数値」というのはある種の魔力を持っていると言えるでしょう。

消費社会がかつてのように単純ではなく複雑した現代では、最強・最大の公約数でもある「数値」を指標とすることで、マーケティングの現場では意思決定のスピードが上がるわけですから、さらに数値への依存度は高くなります。もちろん、顧客の消費行動が数値化できることこそがデジタルマーケティングの魅力でもあるわけですから、「数値」が重要な指標として掲げられるのは当然のことです。しかし、昨今のマーケティングの現場では、この「数値至上主義」の傾向が強くなり過ぎている気がしてなりません。

セッション数やユーザー数やページビューやインプレッションやクリック率やコンバージョン率や滞留時間や直帰率、あるいはリツィート数やシェア数やイイネの数なども、どれもこれもマーケティング上では確かに重要な指標です。しかしブランディングという観点で見た場合、単純にPVを上げたりバズを起こしたり、あるいは瞬間的な売上拡大だけが評価対象になってしまうと、道を大きく踏み外してしまいます。

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実はデジタルマーケティングの世界では昨今、数値至上主義からの脱却を叫ぶ声が大きくなり始めています。

マーケティング自体が、商品中心の1.0時代から、消費者志向の2.0時代を経て、共創・共生型である3.0時代を迎えている現代では、コミュニケーションのあり方も「広告」や「販促(プロモーション)」といった従来型のカテゴリーを超えた「ブランディング」の重要性が、経営戦略の重要なミッションとしてあらためて注目されています。そして、このブランディングという視点においては、顧客との「エンゲージメント」を築くことこそが最重要課題として認識されています。

このエンゲージメントとは、顧客と企業あるいはブランドとの揺るぎない信頼関係や絆であり、それは目の前のPVやバズなどで一朝一夕に構築できるものではなく、誠実で真に有益なモノづくりや企業活動をもとに、時間をかけて成熟させてゆくものです。そしてこのエンゲージメントを左右する最も重要な要素は「コンテンツ」なのです。

数値が重要な指標であることは当然ですが、数値は言い換えれば「人が動いた結果」でしかありません。そして人を動かす動機付けは、コンテンツです。人はコンテンツに驚いたり、共感したり、感動したり、反発したりしながら、行動を起こします。その結果が「数値」なのです。多くのマーケティングの現場では、KGIKPIなどの数値目標を立てて、それらしいスキームを構築することで、ほぼ満足する傾向も多々見受けられますが、しかしいくらスキームが完璧であっても、そのスキーム(ビークルとも言われます)に乗せるコンテンツひとつで、数値は変わるのです。

たとえば、あるコンテンツを100万人に届けるスキームを採用したとして、その施策を実施した場合、100万インプレッションという数値を叩き出すことはできます。しかし、そのコンテンツに響いて共感するユーザーが実際には1000人しかいなかったとすれば、どうでしょうか?あるいは100万人に届けるスキームを採用し、そのコンテンツを受け取った100万人が全員共感したとして、でもそのコンテンツは自社ブランドのイメージやメッセージとは全くかけ離れたものであったとしたら、どうでしょうか?

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コンテンツとは言い換えれば「クリエイティブ」です。それはプロダクトであったり、テキストであったり、デザインであったり、映像であったり、アートであったり、パフォーマンスやインスタレーションであったり、あるいはイベントやアトラクションであったりします。そしてどのようなコンテンツが真にブランドのメッセージを表し、顧客の心を動かし、ひいてはエンゲージメントの構築につながるのか、それをジャッジするのもマーケティング担当者の重要なミッションです。

しかし広告が効かなくなったと言われる昨今では、いわゆる広告的な(ブランドメッセージの押し売り的な)コンテンツは、簡単に無視されるか捨てられるか放置されるかのいずれかの運命を辿るだけです。ソーシャルメディアでのコミュニケーションが主導権を握る現代では、ブランディング・コンテンツの作り方においても、非常にデリケートなクリエイティブ・センスが要求されるわけで、それだけにコンテンツをジャッジするマーケティング担当者の使命は重要だということに他なりません。

現代では、デジタルマーケティングのスキームについて詳しいマーケティング担当者は、星の数もいることでしょう。それはきちんと正解があるからであり、その正解はネットや書籍やセミナーでいくらでも手に入れることができるからです。しかしいざそのスキーム(ビークル)に乗せるコンテンツをジャッジする局面になると、まったく判断ができないという事例が多々有ることも事実です。

ただ残念なことに、コンテンツの善し悪しを判断する基準に正解などどこにもありません。

コンテンツの善し悪しを判断する基準の「正解」は、自社のブランドや社会やメディアや顧客に対する深いインサイト(洞察)と、クリエイティブ全般に対する広い造詣の中にしかありません。そしてその正解を見つけ出すスキルを身につけるためには、教科書や理論だけではなく、最終的には「嗅覚」を鍛えるしか道はないのです。

クリエイティブの嗅覚を鍛える道は決して簡単ではありません。でも優れた嗅覚を持ったマーケッターは、ブランディングにとって不可欠な存在になります。

世のマーケッターの皆さん、頭でっかちの数値至上主義の呪縛から解放され、嗅覚を鍛えましょう。きっと世界が広がりますよ。